
この夏の山行もいつもの年と同様に、きっちりと行程を考えずに「穂高に登る」程度の目的で、行った時の気分次第で行動するつもりでいました。時間があれば大キレットという難所を超えて槍まで行こうかなとも考え装備を軽くしていたので、穂高は思ったより短時間で楽に登れ、穂高の頂上で槍に向かって大キレットを超えて縦走する事に決めました。
大キレット超えは数年前にも計画しましたが、明日大キレットを歩くと言う前日に人が滑落して亡くなりました。大キレットは難所なので滑落死するのは珍しいことではなく、ひと夏に必ず何人か滑落死している所です。登山されているかたはご存知かと思いますが、そんなことがあっても山に入った人は、何事も無かった様にその後も予定通り大キレットを通過されます。でも、その時私はなにか嫌な予感が頭をよぎり、大キレット超えを止めました。そんな気持ちで行かなくても、また今度にしようと思い山を降りました。
そして今年今度は反対側から大キレットを軽装で越えようとした訳ですが、また今度も前日に滑落死する事故が起こりました。よく滑落があるとはいえ、私が行こうと思った前の日に2度も続けてあったものですから、今回もさらに嫌な予感がして「ここは自分を呼んでいない場所」だという思いがして、今回も越えるのを止めました。
多分もう私は大キレットを歩く事はしないと思います。
もし歩いていて万が一滑落したら、3度目の正直で落ちながら「ああ、やはりここに来てはいけなかったのか・・」という無念の思いで落ちて行くのは嫌ですから。
絵は北穂高小屋の小さな窓からの景色です。